【ファクトチェック】「政府が情報操作」そのニュース正しいですか?

【ファクトチェック】「政府が情報操作」そのニュース正しいですか?

 ニュースサイト「リテラ」(https://lite-ra.com/)にて、4月10日に掲載された「外務省が日本のコロナ政策への批判チェックに24億円! 厚労省でも同様の予算…国民の生活補償より情報操作に金かける安倍政権」(https://lite-ra.com/2020/04/post-5363.html)という記事が、ネットで話題になっている。

 この記事では、外務省が、令和2年度補正予算(緊急経済対策)の一環として「日本のコロナ対策に対するSNSなどの批判を封じ込める情報操作の対策費」24億円を計上したと報じ、それがTwitter上で拡散された。

 さらに、その翌日4月11日には、新たに「内閣府でも100億円以上の『コロナ広報予算』! 安倍政権がコロナで情報操作につぎ込む金は外務省の24億円だけではなかった」(https://lite-ra.com/2020/04/post-5365.html)という記事を掲載し、政府に対する批判の声は収まりそうにない。

 しかし、この情報の合理性には疑いの余地が残る。彼らが挙げた証拠を検証し、その正確性の是非を確認したい。

外務省資料をよく読むと…

 外務省の「情報操作」について、彼らは、外務省の補正予算に関する資料を根拠としている。それが、以下に示すものだ。

外務省HPより「令和2年度外務省所管補正予算(第1号)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/yosan_kessan/mofa_yosan_kessan/index.html

 この中の、「【柱1】感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」における、「我が国の状況や取組に関する情報発信の拡充」に充てられた24億円が、情報操作に充てられたものだそうだ。

 この予算の使途について、同資料には次のようにある。

 「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため,外務本省及び在外公館において, SNS等インターネットを通じ,我が国の状況や取組に係る情報発信を拡充。」

 COVID-19(新型コロナウイルス)が世界的な問題になり始めたころから、欧米をはじめ世界各国で、アジア人に対する偏見や風評被害が相次ぎ、アメリカでは暴力事件に発展するなど、社会問題化した。さらに、思い返せば、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故での放射線に関する風評被害は未だに続き、多くの産業者が頭を悩ませている。

 今回のCOVID-19は、もはや世界全体に拡大した以上、風評被害というのはあまり起きないように感じるかもしれない。しかし、海外の動向を見ていると、アメリカと中国が、互いにウイルスを散蒔いたと非難しあう状況が続いており、市民レベルになれば、日本に対しても様々な噂が流れていてもおかしくない状況だ。

 外務省の予算は、そうした風評に対し、正しい情報を発信して、日本に対する不買運動や差別といった被害を防止するためのものではないのだろうか。少なくとも、資料にはそうとしか書いていない。この資料からこれ以上のことを読み取るとすれば、それは「想像」あるいは「妄想」であるとしか言いようがない。

内閣府の予算はさらに幅広い

 同様に、内閣府についても確認してみる。内閣府についても、彼らは補正予算の資料を証拠に挙げている。

内閣府HPより 「令和2年度補正予算(案)の概要」
https://www.cao.go.jp/yosan/yosan.html

 「Ⅰ.感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」の「(1)戦略的広報費」が、「情報操作」の予算に当たるらしい。

 資料には「新型コロナウイルス感染症対策や経済対策に盛り込まれた各施策の内容を始めとした喫緊の 取組等についての国内広報を実施するとともに、日本に対する信認を高めるための国際広報を実施する。」とある。これは、先に述べた対外的な情報発信に加え、国内向けに、例えば事業者に支援策を伝えたり、感染症予防の啓発活動を行ったりするなど、国内外に向けて様々な情報を発信する予算も含まれているものと考えられる。

 幅広い層に伝えるためにテレビCMを打ったりすれば、それなりの経費が掛かるため、100億円という額も決して不思議ではない。

海外では情報操作も

 確かに、中国やアメリカをはじめ、情報操作が世界的な問題になっていること自体は否定できない。米大統領選挙では毎回様々なフェイクニュースが飛び交い、ロシアは各国のSNS世論に介入している。トランプ大統領は、今回の件を利用して自分の支持を固めようと様々な情報戦略に打って出ている。

 しかし、もし本当に政府機関が予算請求をして自ら「情報操作」をしているのであれば、あまりにもレベルが低すぎる。行われているとしても、それは目に見えない形で、政治家やその関係者の手によってされていると考えた方がよっぽど自然だ。

メディアとしての資質が問われる

 デマではないかとの指摘に対し、リテラは次のように反論している。

 全くの筋違いだ。「リテラ」シーの欠片もないとしか言いようがない。例えネットメディアであったとしても、会社として情報を発信している以上、その内容には正確性が求められる。脈絡のない「理由」をそれらしく提示し、根も葉もない噂を世間に広めた罪は、決して軽くはない。

 加えて、市民も、タイトルだけ見て喜んでリツイートするような愚かな真似はせず、きちんと記事を確認し、そのソースと照らし合わせ、きちんと自分で考えることが求められる。

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