タバコが吸いたくて仕方がない北海道自民党

タバコが吸いたくて仕方がない北海道自民党

 2020年4月1日より、健康増進法の一部を改正する法律(以下、改正健康増進法)が全面施行され、既に実施されていた学校、病院、行政機関等の敷地内での全面禁煙に加え、その他全ての施設で原則屋内禁煙となる。

 こうした流れの中、意地でも喫煙所を設置し、タバコを吸おうとする者がいた。彼らの名は、「自由民主党・道民会議北海道議会議員会」。そう、北海道議会の自民党会派である。

経緯

 北海道議会は、庁舎の建て替えを行っており、新庁舎は1月に完成し、6月から新庁舎の使用を開始する予定だ。鈴木直道知事は、受動喫煙防止条例の施行を念頭に、道庁本庁舎の敷地内禁煙を決めており、議会庁舎も当然全面禁煙となると思われていた。

 しかし、2019年10月、道議会最大会派の自民党・道民会議は、自らの会派控室に喫煙所を設置することを決定した。これは、2011年の「希望する会派の控室に喫煙所を設置できる」という合意に基づくものだが、時代が時代なだけに、協力関係にある公明党をはじめ他党から反対され、自民党から出馬し当選した知事も反対の意向を示し、地元紙北海道新聞の世論調査でも設置反対が上回る事態に陥ることとなった。

 自民党・道民議会は未だに喫煙所設置の姿勢を崩さず、各所との対立は続いている。

自民党の奇策

 改正健康増進法により、行政施設は敷地内全面禁煙となっている。常識的に考えれば、議会庁舎内に喫煙所を設けることなどもってのほかだ。しかし、自民党は2つの奇策に出た。

 まず最初に、彼らは議会庁舎は「行政機関」ではなく「立法機関」であるので、改正健康増進法の適用範囲外であると主張した。確かに文字の上ではそうかもしれない。しかし、議会庁舎は傍聴人をはじめ不特定多数の人が利用する公共施設であり、法律の趣旨に照らせ合わせれば喫煙所の設置などできないことに疑いの余地はない。

 次に、税金を使って喫煙所の設置などできないという鈴木知事の指摘に対し、JTが喫煙所を寄付すると申し出た。もちろん事前にすり合わせがあったことは明らかであるが、だからと言って喫煙所を設置していいという論理にはならない。

支持団体の猛反発

 この決定は、先にも述べたように各所からの猛反発を招いた。北海道議会内の他の会派は総じて反対に回り(公明、共産は敷地内全面禁煙を訴えたが、立憲民主喫煙者が多いのか若干歯切れの悪さが目立った。なお国民民主は議員がいない。)、地元紙北海道新聞の世論調査では、85%が反対の意思を表明した。

 さらに、自民党の主要支持団体の一つである北海道医師会の長瀬清会長は、「北海道の恥だ。」と怒りをあらわにし、自民党・道民会議に対し、何度も撤回を要請した。

 このように、自らの支持率低下につながりうるだけでなく、次期選挙で有力支持団体からの支援が十分に得られない可能性すら浮上しているにもかかわらず、未だに彼らは喫煙所設置の方針を転換していない。

背景には党内のの内部分裂?

 こうした状況の背景には、自民党内の内部分裂があるとみられている。2019年の北海道知事選挙に際し、自民党から出馬し4期に渡って知事を務めていた高橋はるみ前知事が参議院に鞍替えすることを表明し、党内では新人の候補者調整に苦戦していた。和泉晶裕国土交通省北海道局長を推すグループと、当時夕張市長を務めていた鈴木直道を推すグループとに分かれ、最終的に後者に一本化したものの、党内に禍根を残すこととなった。

 実は自民党内にも喫煙所設置反対派がおり、その賛否の境目は知事候補をめぐる分裂と一致する。党内主流派が設置賛成側についているため、設置を撤回すれば、非主流派に勢いがついてしまう。そのため、両者ともに譲らず膠着し、いつまでも設置をする方針を変えられないのだ。

どのみち設置はできない

 しかし、最終的に議会施設を管轄する知事は、喫煙所設置に慎重な姿勢を崩しておらず、他会派を説得し議会の総意として設置を要望しない限り、設置が認められることはないとみられている。

 それでも彼らは、自らのプライドを守りたいがために、「ひたすらタバコを吸いたがるおじさんおばさん」という醜態を、今もさらし続けている。

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